マンション売却の知識

  • twitter
  • facebook
  • b!
  • v

近隣トラブルは法律や弁護士で解決できる?~近隣トラブルの具体例と解決方法

promotion

 

最近では、さまざまな価値観を持った人が増えていることから、ちょっとした行き違いや思い違いなどをきっかけとした近隣トラブルも増えています。

しかも、近隣トラブルは、実際に起こってみると、とてもやっかいです。

日常生活の中で、いつ出会ってもおかしくない人、自分の住まいを知っている可能性の高い人が相手になるので、対応を間違えれば、問題はより深刻なものになってしまうからです。

良い解決方法がわからないまま、ひたすら我慢しているという人もいるのではないでしょうか?

そこで、この記事では「隣人トラブル」の具体例や、解決方法について解説していきます。

すでに近隣トラブルで悩んでいる人も、これから新しい生活をはじめるにあたって、将来の近隣トラブルが不安という人も参考にしてみてください。

もくじ

近隣トラブルは他人事ではありません

近年では、テレビのワイドショーなどでも、深刻な近隣トラブルが紹介されることも増えてきました。

それでも、「テレビで取り上げられるのは珍しいケース」、「そんな変わった人はうちの近所にはいないはずだ」と思っている人もいるかもしれません。

しかし、実際には、近隣トラブルは、思っている以上に身近な問題で、誰にでも起こりうる問題であるといえます。

たとえば、警察庁の発表によれば、110番通報以外の警察への相談は、年々増え続けています。

そのなかでも、家庭・職場・近隣関係の相談は、2008年との比較で約2倍の件数に増えているそうです。

また、回答者の半数以上が「ご近所トラブルに巻き込まれた経験がある」と回答している民間企業のアンケート調査もあるようです。

近隣トラブルのよくあるパターン7選

まずは、よく発生しがちな典型的な近隣トラブルの例について確認しておきましょう。

良く発生するトラブルは以下の7パターンです。

  1. 騒音のトラブル
  2. ごみ問題のトラブル
  3. 生活時間帯のずれによるトラブル
  4. ペットのトラブル
  5. 違法駐車のトラブル
  6. 土地の境界問題のトラブル
  7. タバコの煙やポイ捨てによるトラブル

トラブルを回避する、上手に解決するには、その原因や特徴について正しい知識をもっておくことが大切です。

①騒音のトラブル

騒音のトラブルは、近隣トラブルの典型ともいえるものです。

マンション・アパートといった集合住宅だけでなく、一戸建てが密集した地域などでも起こりやすいトラブルといえます。

騒音トラブルについては、

  • ・騒音を出している側は、迷惑を掛けている自覚がない場合が多い
  • ・騒音の原因は、建物の構造などに原因がある場合もある

といった点に注意する必要があります。

音を出している側は、「普通に生活しているだけ」と思っていれば、騒音は恒常的に発生しやすくなり、その分、被害者の精神的負担(我慢)も重くなっていきがちです。

また、建物の構造が原因という場合には、本当に通常の生活をしていたという場合でも、上下左右の部屋に、必要以上に音が反響してしまい「騒音」と感じるレベルになってしまっている場合もありえるでしょう。

騒音トラブルというと「マナー違反の行為」のようなケースを思い浮かべがちですが、実は「居住者は誰も悪くなかった」ということもあり得るわけです。

②ごみ問題のトラブル

ゴミの処理についての問題も近隣トラブルの典型例のひとつといえます。

いわゆる不法投棄・ポイ捨てといった問題だけでなく、ゴミ出しの時間、方法といったマナーに関わることも、近隣トラブルに発展しやすいといえます。

ただ、不法投棄やマナー違反のゴミ出しについては、全くヨソの地域の人が行っているというケースも少なくないので、対処に困る場合も少なくないようです。

私自身も、自分の住まいの近くのゴミ集積場に「車でゴミを捨てに来ている人」がいるのを何度か見かけたことがあります。

③生活時間帯のずれによるトラブル

最近では、さまざまなスタイルで生活する人が増えています。

深夜に起きて仕事をする人もいれば、朝方に仕事から帰宅する人も珍しくなくなりました。

また、(最近では短縮営業する店舗が増えていますが)年中無休24時間営業している店舗が増えたことで、深夜に買い物・食事にでかけるという人も増えています。

そのような生活時間帯のトラブルが、「夜中に扉の開け閉めがうるさい」、「夜中の長電話の声がうるさい」、「決められた時間以外にゴミを出している」といったトラブルの原因となっているケースも少なくないようです。

④ペットのトラブル

ペットもさまざまな近隣トラブルの原因となりやすい存在です。

たとえば、

  • ・ペットの鳴き声がうるさい
  • ・放し飼いをしていて危険
  • ・糞尿被害
  • ・不衛生に飼っていることが原因の悪臭

といったペットを原因とする近所トラブルはよく耳にするところです。

そもそもペット禁止のマンションでペットを秘密で飼っているような悪質なケースもあります。

⑤違法駐車のトラブル

違法駐車の車があって、通行の邪魔になるといったトラブルもよくみられるケースです。

自動車を購入する際には、車庫証明を取得するので、車庫のない自動車というのは本来あり得ない話です。

しかし、車庫証明は形だけ取得しておいて、実際には違うところに停めているという人が少なからず存在するのも事実です。

また、来客の車が、その人の自宅前にびっしりと停めっぱなしになっていて、通行の妨げになるというケースも、よく見られますし、中には、他人が契約している駐車場などに無許可で駐車しているというケースもあるようです。

⑥土地の境界問題のトラブル

日頃は意識している人は多くないかもしれませんが、土地の境界をめぐるトラブルは、歴史的にも最も古くからある近隣トラブルといえます。

たとえば、ブロック塀やフェンスが越境してこちらの土地に入り込んでいるといったような典型的なケースだけでなく、

  • ・屋根の庇(ひさし)が越境していて、雨水(雪)がこちらの土地に流れ落ちてくる
  • ・エアコンの室外機がこちらの敷地にはみ出している
  • ・越境して土地を利用され、自分の土地を利用するのに支障がでている

など、さまざまな形でトラブルとなります。

法律上の境界線は、目に見えるものではありませんから、実は知らないうちに越境しているというケースや、そもそも住宅などの施工業者が間違えて工事したために、最初から越境していた(住人には落ち度が全くない)というケースもあるのです。

また、日本人にとって土地はとても重要な財産であることから、土地境界のトラブルは深刻化しやすく、「境界争いは孫の代まで」といわれることもあるくらいです。

さらに、隣地との間で土地の境界の認識が一致していなければ、土地を売却することができない、抵当権を設定することができないといった不都合も生じてしまいます。

⑦タバコの煙やポイ捨てによるトラブル

近年増えているのがタバコをめぐる近隣トラブルです。

最近は、家族への影響や、屋内を汚したくない(退去時に修繕費がかかることを避けたい)といった理由から室内ではタバコを吸わないという人も増えています。

そのため、ベランダや庭、玄関先から流れてくるタバコの煙や、吸い殻の処理などをめぐってトラブルになるというケースも多いようです。

最近はタバコを吸わない人(タバコ自体が嫌いな人)も増えているので、喫煙者には気がつかないちょっとしたことが大きなトラブルにもなりやすいといえます。

特に、タバコの臭いに関するトラブルは、喫煙者は気がついていないケースが多いので注意が必要でしょう。

近隣トラブルの7つの対処法

近隣トラブルに巻き込まれてしまった場合には、どう対応して良いかわからないという場合が多いと思います。

顔や住まいを知っている相手だからこそ、対応できない、対応しづらい(クレームを言いにくい)という場合も少なくないからです。

  1. ここでは、近隣トラブルに巻き込まれたときの7つの解決方法、
  2. 物件の管理会社へ相談(賃貸物件でのトラブルの場合)
  3. 直接話し合いで解決する
  4. 自治体や町内会の協力を得る(民生委員、地域包括センターも含む)
  5. 行政機関へ相談する(ゴミ問題等の場合)
  6. 警察に相談する
  7. 弁護士に相談する
  8. 引っ越しをする

について、一つずつ見ていきます。

①物件の管理会社へ相談(賃貸物件でのトラブルの場合)

賃貸物件(マンション・アパート)に住んでいるときには、管理会社(もしくは家主)に相談してみることが、とりあえずの選択肢としては最も有効です。

その際には、

  • ・困っているトラブルの具体的な内容
  • ・トラブルが発生した日時・発生頻度など

を正確に伝えることが大切です。

管理会社としても、近隣トラブルは穏便に解決したいと考えるでしょうから、トラブルがこれ以上深刻化しないように上手に対応してくれる可能性は高いといえます。

また、集合住宅で多く見られる騒音問題の場合には、物件の設備が原因となっていることも珍しくありません。

そのあたりのことも意識しながら管理会社に対応をお願いしてみるとよいでしょう。

他方、ずさんな管理会社だった場合には、対応が稚拙でトラブルが逆にこじれたり、全く対応してもらえないということもあるかもしれません。

そのような場合には、近隣トラブルというよりは、きちんと管理できない会社の物件で生活することはリスクが高いともいえるので、近い将来の引っ越しを検討することも悪い選択肢ではないといえるでしょう。

②直接話し合いで解決する

近隣トラブルは、加害者も被害者も近い距離で生活をしています。

当然、日常生活の中で顔を合わせることもあるでしょう。

ある程度の面識のある関係であるならば、実際に困っていることを相手に直接伝えてみるのもひとつの方法です。

近隣トラブルの多くは、「それによって困っている人がいる」、「自分のしている行為が誰かに迷惑を掛けている」ことに気づいていないというケースも少なくないからです。

他方で、相手と直接話をすることにはリスクもあります。

「些細なことでクレームを付けられた」とネガティブに受け止められれば、相手からの反発を受けることや、今後の近所づきあいに悪影響がでることも考えられるからです。

また、こちらが苦情を述べたことがきっかけで、「実はこっちも我慢していることがある」と反論され、売り言葉に買い言葉のような激しい喧嘩に発展してしまうケースもあるかもしれません。

以上のように、相手と話をしてみるということは、とても有効な解決方法となる可能性がある一方で大きなリスクを抱えることもあります。

相手と話してみようと思ったときには、話題の持ちかけ方、苦情の伝え方といったことにも十分注意した上で慎重に対応することが大切です。

③自治体や町内会の協力を得る(民生委員、地域包括センターも含む)

一戸建て住宅街の近隣トラブルや、自分の家だけ以外にも迷惑を感じている人がいそうな問題であれば、自治会(町内会)や、地域の民生委員に相談してみるのも選択肢のひとつとえいます。

回覧板や地域の集会(班長会議)などを上手に活用して、「なんとなく」その地域でトラブルが起きていることを知らせてもらうことで、今後迷惑行為がおきにくいような環境を整えていくということです。

また、近所の高齢者が原因のトラブル(認知症高齢者の徘徊など)が起きている場合には、「地域包括センター」に相談してみるのも有効な場合があります。

④行政機関へ相談する(ゴミ問題等の場合)

管理会社・自治会への相談などでも状況が改善されないケースでは、自治体(市区町村役場)に相談してみるのも選択肢のひとつです。

特に、ゴミ・悪臭問題は、地域衛生の観点から役所も比較的動きやすい問題であるといえます。

また、近所の店舗の騒音などが問題となっている場合にも、営業免許との関係で自治体が動いてくれる場合もあるかもしれません。

⑤警察に相談する

最近では、近所トラブルが警察に持ち込まれるということも増えているようです。

たとえば、警察では、いますぐ警察官に駆けつけてもらう必要のない(緊急ではない)案件の相談などの窓口として警察相談専用電話「#9110」を設置しています。

警察への相談が適当なケース(警察が動いてくれる可能性の高いケース)

相談をきっかけに警察が何かしらの対応をとってくれるケースとしては、次のような場合が考えられます。

  • ・特定の家(人)を対象にした悪質ないやがらせ行為
  • ・犯罪行為であることを示せる具体的な証拠がある場合
  • ・その問題を放置しておくと周辺の治安に重大な悪影響が生じるおそれがある場合

たとえば、

  • ・毎朝のように家の前や郵便受けにゴミや汚物が廃棄されている
  • ・何度も玄関の鍵穴をいたずらされる

といった行為があれば、もはや近隣トラブルというよりは、犯罪行為に近い問題といえます。

他の行為(明らかな迷惑駐車や暴走運転、らくがき)などでも、頻度が多く、具体的な証拠があれば、警察が動いてくれる可能性は低くないでしょう。

他方で、

  • ・悪口を近所で言いふらされている(ような気がする)
  • ・隣の家がうるさいといった明らかな民事トラブル

の場合には、警察に相談をしても動いてもらうことは難しいといえます。

刑事事件(名誉毀損など)が疑われるケースであっても具体的な証拠がない場合は、警察は動いてくれない場合がほとんどですし、明らかに民事の問題であれば、そもそも警察は動きようもないからです。

⑥弁護士に相談する

近隣トラブルを解決する最後の方法は、弁護士に相談(依頼)してみるということです。

弁護士はトラブル解決のプロですから、それぞれのケースを上手に解決するよい方法を助言してもらえる可能性が高いといえるでしょう。

弁護士に相談するというと敷居が高いと感じる人もいるかもしれません。

しかし、自治体が主催している無料相談会などを利用すれば、お金をかけずに弁護士にアドバイスを求めることができます。

⑦引っ越しをする

「近隣トラブルのせいでこれ以上今の家に住んでいたくない。」

「相手と揉めたり裁判になるんだったら引っ越したほうがましだ。」

と感じる人も一定数いるのではないでしょうか?

もちろん状況次第ですが、一番きれいに隣人トラブルを解決する方法は、引っ越しをしてしまうことです。

賃貸であればそもそも大きな負担にはならないでしょうし、購入した家であっても、一生嫌な気持ちを持ち続けるくらいなら、早めに引っ越しをするのも一つの選択肢です。

幸い、2019年は不動産価格が高騰しているため、高値での売却がしやすいタイミングです。

参参考:季報MarketWatchサマリーレポート 2019年1~3月期

2020年には不動産価格が下落し始めると考えられているので、もし少しでも売却を考えているのであれば、2019年内をおすすめします。

<関連記事>

家を売る10の手順【2019完全版】失敗しない家を高く売る方法

マンション査定で失敗しない3つの方法【2019最新版】1円でも高くマンションを売却する道しるべ

近隣トラブルの解決を弁護士に依頼する方法

弁護士には、相談だけでなく、トラブルの解決を依頼することも可能です。

ここでは、弁護士に依頼するとどのように解決してもらえるのか、弁護士に依頼する際のポイントなどについて解説していきます。

弁護士が近隣トラブルを解決する方法

弁護士が近隣トラブルの解決を依頼されたときには、次のような方法で対応してくれます。

  1. 自治体・警察などへの働きかけ
  2. 相手方への働きかけ
  3. 裁判所の手続きを利用した解決

それぞれ解説しておきましょう。

①自治体・警察などへの働きかけ

弁護士が近隣トラブルの解決を依頼したときには、弁護士が自治体・警察などに(再度)働きかけをすることがあります。

近隣トラブルの場合には、弁護士を立てた場合であっても、弁護士自身が直接交渉に乗り出すよりも、もっと穏便な方法で解決した方が依頼人の利益となることがあるからです。

実際にも、弁護士が働きかけたことで、自治体・警察などが重い腰を上げてくれたということは少なくありません。

近隣トラブル処理の経験が豊富な弁護士であれば、行政に動いてもらうためにどう交渉すればよいか、どんな資料を揃えたらよいかということは熟知していますし、自治体や警察としても「緊急の事案」として受け止めてくれる可能性が高いからです。

②相手方との協議

依頼人の代わりに相手方と交渉をすることは、弁護士にとって最も基本的な業務です。

近隣トラブルの解決を依頼されたときにも、依頼人に代わって、相手方と直接交渉することで問題解決を図る場合があります。

実際には、弁護士から電話や書面などで相手方に状況を伝えて、問題の解決や再発の防止を促すところから交渉することが一般的でしょう。

多くのケースの場合には、相手方も弁護士から連絡がくれば、「このままではマズイ」と感じる人が多いと思いますので、問題解決に向かうケースが多いと思われます。

③裁判所による手続き

一般の人には「弁護士=裁判」というイメージを持っている人が多いかもしれませんが、実際には、弁護士にとっても裁判所の手続きは、「できれば使わずに済ませたい最終的な解決方法」です。

まして、近隣トラブルであれば、弁護士が交渉にでてきただけでなく「裁判所にまで呼び出された」ということで、相手方の感情をいたずらに刺激してしまうこともあるかもしれません。

したがって、実際に裁判所の手続きを用いるのは、

  • ・他の手段では問題が解決する見込みがない場合
  • ・現実に補償(補填)を求めるべき損害が発生している場合
  • ・緊急に対策を講じなければ多大な損害が発生するおそれがある場合

に限られるのではないかと思います。

具体的には、

  • ・簡易裁判所に民事調停を申し立てることで、再度の話し合いを試みる
  • ・実際に発生している損害について賠償を求める民事訴訟を提起する
  • ・今後起こりうる迷惑行為を禁止する仮処分(もしくは差止め訴訟)を申し立てる

といった対応が考えられます。

弁護士に依頼した際の費用

弁護士に依頼した際に発生する費用は、最終的に弁護士に依頼する(弁護士が行う)対応に応じて異なります。

たとえば、行政への働きかけや、書面(内容証明郵便の発送)程度の依頼であれば、5万円から10万円程度の着手金(と手数料)のみで引き受けてくれる事務所も多いでしょう。

他方で、調停や訴訟を用いて話し合うという場合には、着手金だけでも10万円、20万円といった費用がかかり、和解や勝訴判決を得たときには、別途成功報酬が発生します。

さらに、損害賠償請求(慰謝料請求)をした場合には、得られた賠償金(慰謝料)の金額に応じて、歩合制の成功報酬も発生します。

とはいえ、近隣トラブルの損害賠償金は、数百万円といった高額なものになることも少ないので、着手金込みで30万円~60万円程度の費用で収まる場合が多いと思われます。

弁護士保険とは?

近隣トラブルを依頼したときに発生する弁護士費用は、他の事件の依頼に比べて安い場合がほとんどです。

しかし、費用を支払う依頼人にとっては、10万円、20万円という費用であっても、とても高額に感じることが少なくないでしょう。

このような場合に便利なのが「弁護士保険」です。

弁護士保険とは、法的なトラブルに巻き込まれた場合にかかる弁護士費用を保険会社が支払ってくれる内容の損害保険の一種です。

一般的な弁護士保険では、事件1件あたり100万円前後までの弁護士費用を補償してくれるので、近隣トラブルであれば、費用の持ち出しをすることなく、弁護士にトラブル解決を依頼することができます。

最近では、近隣トラブルにかぎらず、さまざまな法的トラブルに巻き込まれるリスクは増えていますから、弁護士保険に予め加入しておくのもよいことなのかもしれません。

弁護士の選ぶ時の窓口や注意すべきポイント

近隣トラブルの解決を弁護士に依頼したいと思っても、どうやって弁護士を探せば良いのかわからないという人も多いと思います。

弁護士にアクセスする一般的な方法としては、

  • ・自治体の無料相談を利用する
  • ・法テラスの無料相談を利用する(収入・財産が一定額以下の人のみ)
  • ・地元の弁護士会に紹介してもらう
  • ・知人に紹介してもらう
  • ・インターネットを活用する

といった方法が考えられます。

このうち、隣人トラブルの解決を依頼する弁護士を探す方法としては、知人からの紹介とインターネットの利用がもっとも確実です。

自治体の無料相談では、相談を受けた弁護士は事件の依頼を受けられないという場合があります(自治体によっては受けられるという場合もあります)。

また、法テラスや弁護士会では、「特定の案件に強い弁護士」を紹介することは行っていません(ネットなど「法テラスで紹介してもらいましょう」といった間違えた情報が多く掲載されていますので注意しましょう)。

さらに、弁護士のすべてが近隣トラブルの解決に詳しいかといえば、そうではありませんので、最終的には、口コミやネットの情報(それぞれの事務所ウェブサイトに記載されている情報)などを参考に、直接弁護士と会って、自分で選択するほかありません。

よい弁護士をみつけるポイントとしては、

  • ・説明が丁寧
  • ・口調が穏やか
  • ・費用体系がわかりやすい
  • ・すぐに訴訟を起こすことを提案しない

といったことを重視すると良いと思います。

弁護士に依頼することは、近隣トラブルを解決する上では、有効な方法ですが、リスクが全くないわけではありません。

「弁護士がでてきた」ということで逆上する相手方もいるかもしれないからです。

その意味では、依頼人への対応も「上から目線」、「口調がキツイ(攻撃的)」と感じる弁護士は、デリケートな対応が必要な近隣紛争に向いていない可能性が高いといえます。

すぐに訴訟で解決、損害賠償を請求しましょうと提案する弁護士も同様です。

依頼人側に損害賠償を支払って欲しいという強い要望がない限りは、近隣トラブルの解決方法として、損害賠償請求訴訟は必ずしも有効な方法とはいえない場合が多いからです。

また、説明が丁寧(具体的)でない弁護士は、近隣トラブルの経験が少ない可能性があります。

近隣トラブルで損害賠償を請求できるのはどんなケース?

近隣トラブルの多くは、「お金の問題ではない」と考えるケースが多いと思いますが、他方で、「すでに多大な損害が発生しているから補償してもらいたい」と考えるケースがあることも事実です。

たしかに、近隣トラブルでも、実際に具体的な損害が発生している場合には、相手方(加害者)に賠償を求められる場合があります。

近隣トラブルによって、相手方に損害賠償を求める際に、特に重要となるのが「受忍限度」という基準です。

わかりやすくいえば、近隣関係は「お互い様」の部分もあるので、それぞれのケースの具体的状況をみて、どう考えても常識的に「我慢の限界を超えている」と考えられる度を超えた迷惑行為があるときに、相手方(加害者)の賠償責任を認めようという考え方です。

また、「受忍限度を超えていること」についても、被害者側が証拠を揃えなければなりません。

以上の説明からも想像できるように、近隣トラブルを原因に損害賠償を求めるというのは、簡単なことではありません。

どうしても加害者に補償してもらいたいということきには、トラブルがさらに深刻化する前に、できるだけ早い時期に弁護士に相談しておくことを強くオススメします。

実際に起こったよくある近隣トラブル事例3つ

実際に起きたトラブルを例に、近隣トラブルが解決するまでの流れを確認しておきましょう。

実際のトラブルを知ることで、不要なトラブルを回避できるコツが見えてくるかもしれません。

隣の家の木の枝が伸び放題で、自宅敷地内に大量の葉が落ちてしまうケース

隣の家の庭などに植えられている木の手入れが行き届かずに、枝が伸びきって越境してしまうというケースは、比較的よく見受けられるケースです。

越境してきた枝が邪魔になるだけでなく、葉の落ちる季節には、大量の落ち葉がこちらの庭などに散乱して問題がおこる(片付けが手間になるだけでなく、排水溝や雨樋がつまる原因となる)こともあります。

実は、伸びて越境してきた枝や根の問題は、民法に次のような規定があるのです。

民法 233条

1.隣地の竹木の枝が境界線を越えるときは、その竹木の所有者に、その枝を切除させることができる。

2.隣地の竹木の根が境界線を越えるときは、その根を切り取ることができる。

引用:民法第233条 – Wikibooks

とはいえ、実際に法律が定めているからと、強硬な態度で対応するように迫っては、それこそトラブルが深刻になってしまうこともあるでしょう。

また、根についても、切り取ることができると認められているからといって、闇雲な切り方をして、木を枯らせてしまえば、こちらが加害者とされる近隣トラブルになってしまう可能性があります。

法律があるという場合でも、まずはできるだけ穏便な方法で、お隣さんに適切な対応を求めるなり、「伸びてきた枝をこちらで伐採してしまってもよいか?」、「根がこちらの敷地にまで伸びてきて、このままでは〇〇となる危険もあるから、どう対応したらよいか?」といった、穏やかな対応をしてみるのが一番といえるでしょう。

落ち葉については、法律的には非常に難しい問題です。

「落葉は自然現象であり、その期間も1ヶ月程度に限られるから受忍限度の範囲内である」という最高裁判決があるからです(最高裁昭和58年8月31日判例タイムズ606号99頁。この事案は、厳密には国家賠償の事案なので近隣問題ではありませんが、近隣問題のケースでも適用されると理解されています)。

したがって、落ち葉の問題については、その樹木の所有者と丁寧に話し合いを持ちながら、お互いが納得できる解決策を見いだしていくほかないといえます。

落ちてきた葉を相手の土地に投げ入れ返すといった行為は、相手の感情を逆なでしてしまい解決から遠ざかる可能性の方が高いので慎むべきといえるでしょう。

団地・アパート、マンションといった集合住宅での騒音トラブル

団地やアパート、マンションといった集合住宅では、両隣や上の階の生活騒音に耐えられないというトラブルがよく起こります。

特に、古い建物が多い団地や木造アパートでは、防音対策もしっかりされていないことが多く、ちょっとした音や振動でも大きなトラブルに発展してしまうことがあります。

実際にあったケースとしては、

マンションの真上の部屋に新しく引っ越してきた家族の小さい子どもが、毎日のように、時には深夜遅い時間帯にも、激しく走り回ったことがきっかけで、生活に支障を来したとして損害賠償請求を求める裁判まで発展するケースもあるようです。

実際の判例では、慰謝料請求が認められたものも、請求が棄却(慰謝料が認められなかった)ものもあるのですが、

  • ・生活騒音が発生している頻度や時間帯
  • ・実際の騒音・振動の大きさ
  • ・トラブル発生から訴訟提起までのプロセス

が損害賠償請求が認められるか否かのポイントとなっています。

慰謝料が棄却されたケースの多くは、

  • ・生活騒音が発生しているのは、限られた時間帯に過ぎない
  • ・実際に発生している音・振動の大きさは異常とはいえない

といった事情が決め手となっています。

他方で、慰謝料が認められたケースでは、

  • ・騒音、振動が発生しているのはほぼ毎日である
  • ・深夜の時間帯にも騒音、振動が発生していることが多い
  • ・発生している音・振動もかなりの大きさである(被害者が計測している)
  • ・訴え提起前に、問題解決のための十分な働きかけをしている(管理会社・管理組合からの働きかけがあったのに改善されなかった等、加害者側の対応に誠意がない)

という事情が判断のポイントとなっています。

つまり、受忍限度の判断には、音や振動の大きさといった観点だけでなく、問題発生から被害者側がきちんと対応してきたか、それに対して加害者は誠実に応じたかどうかといった道義的な要素も含まれうる余地があるということです。

「いやがらせ」によるトラブル

いやがらせによるトラブルは、特に難しい問題が少なくありません。

たとえば、最近では、近隣住民の玄関先に多量の汚物を数年間にわたり廃棄しつづけた男が逮捕されるというニュースが報道されたばかりです。

この事件では、被害者が数年間ものあいだ嫌がらせ行為を我慢しつづけたことにまず驚きを覚えます。

この事件では、防犯カメラの映像が犯人逮捕の大きな端緒となったのですが、一般の人の通報だけで、そこまでの捜査を行ってもらえるケースは、実際には多くないかもしれません。

他方で、いやがらせ行為は、放置するとエスカレートしていくケースも少なくありません。

近隣トラブルが殺傷事件に発展するということは、決して珍しくありません。

また、原因を探ろうにも、一方的な逆恨みのようなケースでは、こちらとして出来る対処が全くない、原因を探ろうと周囲に働きかけたことが原因で逆上されるリスクもあります。

「もしかしたら私に何か原因があるかも?」と振り返ることは、近隣トラブルを回避・予防する上でとても大切なことですが、それでもなお原因がつかめないというようなときには、できるだけ早く第三者に相談して適切なアドバイスをもらうことが、自分の身を守る上でも大切といえます。

近隣トラブルを未然に防ぐには?

近隣トラブルは、「起こさずに済む」ことが一番です。

実際にも、日頃の意識ひとつでトラブルの発生を回避できる場合も少なくありません。

そこで、近隣トラブルを予防するために知っておいた方がよいことをまとめておきます。

普段の生活の中で注意すべきこと

近隣トラブルの多くは、住民相互の付き合いが希薄になったことが原因といわれています。

たとえば、「隣に住んでいるのがどんな人であるか(何をイヤと感じる人なのか)」を知っていれば、自ずと相互に気をつけながら生活することも可能といえるわけです。

そもそも顔も名前も知らないということは、相手にとっては存在していない人と同じであるといえます。

「知りもしない、いるかいないかわからない人」のために用心をする人は、実際にも少ないかもしれませんし、「顔も名前も知らないから何も言ってこないだろう」と決めつけられているかもしれません。

その意味では、日頃からの最低限の近所づきあい(近所や集合住宅内ですれ違ったときの簡単な挨拶)を怠らないことは、近隣トラブルを防止する一番有効な手段といえます。

むしろ、日頃の近所付き合いを疎かにしてしまったことがきっかけで、あらぬ恨みなどをかわれて、いやがらせをうけることもあるかもしれません。

また、他人から受けた迷惑と感じる行為をきっかけに、自分の行動を振り返ってみることも重要な予防策といえます。

たとえば、壁の薄い集合住宅や閑静な住宅街で「隣の物音、話し声がうるさい」と感じるときには、こちらの生活騒音をお隣さんも「うるさい」と感じている可能性は十分に考えられます。

近隣トラブルは、どちらが悪いとは決めつけづらい「お互い様」のケースも数多く存在しているのです。

引っ越し前に確認するべきポイント

新居への引っ越しは近隣トラブルが起きるきっかけになりやすいといえます。

その地域(マンション)の慣習を知らない人がやってくることで、お互いの生活のさじ加減に狂いが生じることもあるからです。

特に、音・臭い・煙といったことにナーバスな人の場合には、それらのストレスを感じにくい物件を選ぶことも、近隣トラブルを回避するためには重要です。

壁の薄い物件、音の響きやすい物件、風下の物件、階下の物件を選べば、それだけ、近隣住民の生活の影響を受けやすくなるからです。

「最上階の角部屋」を選択して引っ越すだけ、木造や軽量鉄骨のアパートをさけ、「鉄筋コンクリート(RC・SRC)のマンション」を選ぶだけでも、隣や上下階の部屋の音はずいぶん気にならなくなります。

また、部屋の間取りにも注意が必要でしょう。寝室が隣の部屋のリビングなどに接しているような物件では、どうしても生活騒音がはいってきやすくなります。

他方で、「近隣住民から苦情を受けたくない」という場合であれば、「再下階の部屋」を選ぶ、家具(テレビやオーディオ機器)の配置に気をつけるというだけでも、自分の足音や部屋で物を動かす音が原因で苦情をもらうリスクはほぼなくなります。

さらに、当然のことですが、引っ越しした際には、両隣りや集合住宅の場合には、上下階といった「お互い様の関係」になる住人には、最低限の挨拶をしっかりしておくことも大切です。

まとめ

以上のように、近隣トラブルを予防し、効果的に対処するには弁護士保険が非常に有効です。

近隣トラブルは、どのような人にも起こりうるものですから、万一の場合に備えて是非とも弁護士保険に加入しておくと良いでしょう。

今回の記事が少しでも参考になれば、幸いです。

FOLLOW US!

  • twitter
  • facebook
  • b!
  • v
\ 不動産売却で損しないために! /