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空き家対策特別措置法で空き家の固定資産税が跳ね上がる?特定空き家の認定を防ぐ方法も解説

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「不要となった不動産をどうするか」は、とても悩ましい問題です。

たとえば、遠方にある自分が使う予定の全くない不動産を相続してしまったときには、その手入れ・管理をしにいくことすら大きな負担です。

「私には関係がない」のだから放置しておこうと考える人もいるかもしれません。

しかし、空き家を放置していると、さまざまな問題が起きる可能性があります。

「空き家対策特別措置法(空き家法とか空き家特措法と呼ぶこともあります)」は、空き家が原因のさまざまな問題と解決・予防することを推し進めるために作られた法律です。

「私には利用価値がないから」といって相続した建物を放置しっぱなしにしておくと、空き家法によって大きな不利益が生じるおそれがあります。

そこで、今回は、「空き家対策特別措置法」について、主に空き家の所有者の観点から解説していきます。

空き家対策特別措置法の概要をわかりやすく解説

空き家特措法は、「空き家の放置」によって周囲に迷惑がかかることを「回避するために必要な措置」を講じられるようにすることを目的とした法律であるといえます。

空き家特措法の主たる内容は、次の5点にまとめることができます。

  1. 国に「空き家対策」基本方針を定めることを義務化
  2. 市町村に空き家対策についての計画を定める権限を付与
  3. 市町村に空き家などの調査を行う権限を付与
  4. 空き家などについてのデータベースの整備
  5. 放置された空き家に対する措置の実施権限の付与(強制執行・税制措置)

【参考】空き家対策特別措置法の概要(国土交通省作成資料:PDFファイル)

空き家特措法が制定された理由・背景

空き家の(放置の)問題は、社会の高齢化に伴いクローズアップされるようになりました。

特に、国内人口が減少に転じていくことで、さらに都市部とそうではない地域との間のさまざまな格差が広がったことで、「ちょっとでも不便な地域」には住みたくないと考える人の割合も増えています。

また、不便な地域の不動産は資産価値も目減りしていることが多く、「持っていることそれ自体が負担である」というケースも増えてきました。

そのため、「全く使われる見込みのない(管理すらされない)不動産」が全国でも増えてきているのです。

たとえば、上で引用した国土交通省の資料では、平成25年現在の空き家は、全国で820万戸にもなるとされています。

建物や土地は、適切に管理されなければ、所有者の想像以上に早い速度で荒廃していきます。

建物が朽ちることで、隣地などに迷惑をかけることもあるでしょうし、庭に腐った枝葉が溜まることで、害虫や汚臭が発生することもあります。

また、地域の防災、治安にも悪影響を与えることがあるでしょう。

そこで、不動産(空き家)が適切に管理されないことが原因で生じるさまざまな不都合を回避・予防するために制定されたのが空き家対策特別措置法です(平成27年5月に完全施行)。

空き家対策特別措置法のなかで使われる「空家等」の定義

空き家特措法の対象となるのは、「空き家」だけではありません。

空き家特措法2条1項によれば、

  • ・建物やそれに付属する工作物
  • ・建物などの敷地
  • ・立木そのほか土地に定着する物

であり、「居住その他使用がなされていないことが常態である」ものが空き家特措法でいう「空家等」となります。

「特定空家等」に指定されてしまう場合

空き家特措法では、「空家等」のうち、

  • ・倒壊する可能性が高いなど、著しく保安上危険となるおそれのある状態
  • ・ 著しく衛生上有害となるおそれのある状態(悪臭・土壌汚染・害虫の発生など)
  • ・ 適切な管理が行われないことにより著しく景観を損なっている状態(いわゆる「ゴミ屋敷」のようなもの)
  • ・ その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切である状態(犯罪に悪用されるおそれがある、放火の危険にさらされているなど)

にあると認められる空き家等を「特定空家等」と定めています。

要するに、「周囲に迷惑をかける可能性が高いほど放置されている空き家など」のことを特別に認定して必要な措置を講じるというのが、空き家特措法の内容というわけです。

「特定空家等」になるとどんな不都合が生じるのか?

市区町村は、「特定空家等」の所有者に対して、特定空家が原因となる問題発生を回避するために、必要な措置を講じることができます。

管理の放置で荒れ放題になった不動産を例に、市区町村が取りうる措置について、解説してみましょう。

助言・指導

空き家等が原因に問題が発生している(発生すると予測される)ときには、市区町村は、登記簿・住民票・固定資産税課税台帳などの資料を基に、その所有者を特定します。

さらに、市区町村は、特定された空き家等の所有者に対し、空き家等の修繕・解体などについて、「助言」や「指導」を行うことができます。

「このまま放置されると問題が起こるので、使わなくなった建物を壊したり、庭の手入れなどをきちんとされてはどうですか?」というアドバイスなどをするということです。

勧告・命令

助言・指導によっても、状況が改善されないときには、所有者に対して「書面による勧告」がなされます。

勧告によっても改善されないときには、さらに強い警告に該当する「改善命令」が発令されます。

「命令」は、「期限にまでに改善されなければ強制措置を取る」という趣旨のかなり強い警告です。

勧告対象になると固定資産税が跳ね上がる

特定空き家等に認定され、さらに改善の「勧告」を受けると、その空き家等に適用されていた固定資産税の減税措置が「適用除外」となります。

この減税措置は、「住宅用地特例措置」とよばれ、居住用の建物のある土地については、「200平米までは固定資産税を1/6に、200平米を超える土地については固定資産税を1/3にする」という措置がとられているのです。

つまり、「もう住むことはないから」と空き家を取り壊してしまえば、減税措置を受けられないために、「放置された空き家が増えてしまう」という悪循環にもなっているといわれています。

そこで、「勧告」の対象となった空き家等については、固定資産罪の減税措置の対象から外すことで、空き家の取り壊し(管理の改善)を促そうというわけです。

☆強制措置

命令が発令されても、期限までに改善されなかった場合には、市区町村が、所有者に変わって改善・解体のための工事を執り行います(いわゆる行政代執行の手法)。

この場合の工事費用は、市区町村から、「特定空家等の所有者」に請求されます。

空き家対策特別措置法の限界(問題点)

「特別措置法」という名称の法律が施行されたときくと、それによって「問題がすべて解決する」というイメージを持つ人もいるかもしれません。

しかし、空き家特措法は、市区町村に空き家の状況を正確に把握させた上で、適切な介入権を行使できる状況を整えたものに過ぎません。

空き家特措法ができたからといって、空き家自体をなくすことは、そもそも不可能ですし、空き家特措法によって、「空き家所有者の負担が直接減る」ということもありません。

空き家の所有者となってしまったときには、「所有者自身の責任できちんと対処する」ことは、空き家特措法が施行の前後で変わるものではないということです。

空き家対策特別措置法の効果は?状況は改善された?

ウェブ上には、「空き家特措法は効果がない」という解説記事も散見されますが、このあたりは評価の難しい問題です。

そもそも、空き家特措法は、空き家問題に行政が介入できる権限を明確化(強化)するために制定された法律に過ぎないからです。

空き家問題は、空き家所有者の「私的な所有権」に関わる問題でもあり、すべてを行政が当然に強制解決させられるというわけではありませんから、空き家特措法は、そもそも「空き家問題(のすべてを)抜本的に解決できる法律」ではないのです。

たとえば、これまでに行政機関が強制措置(代執行)を行った件数が少ない(平成31年3月31日までに23件)ことだけをもって、「空き家特措法には効果がない」と決めつけるのは、少し乱暴な議論かもしれません。

特定空き家に認定され、助言・指導(10,676件)や勧告(552件)・命令(70件)を行ったことで、問題が解消されたケースもないとはいえないからです。

行政代執行が行われる他のケースと比較したときには、命令70件に対し、代執行が23件というのは、決して少ないとはいえないとも考えられます。

特定空き家に認定されることを防ぐためにできる3つのこと

空き家の所有者となってしまったときには「特定空き家」に認定されることを回避する必要があります。

そのために対応としては、次の3つが考えられるでしょう。

  • ・きちんと管理する
  • ・周辺とのコミュニケーションを密にする
  • ・空き家管理サービスを利用する

空き家の管理をきちんとする

特定空き家は、「空き家が管理されずに周囲に迷惑をかける可能性が高い」場合にのみ認定されるものです。

したがって、自分の所有物である「空き家」をきちんと管理していれば、特定空き家に認定されることはないわけです。

たとえば、

  • ・敷地外に伸びた枝葉をきちんと伐採する
  • ・庭の草むしりをきちんと行う
  • ・不要なゴミを投棄しっぱなしにしない
  • ・屋根の雪下ろしをきちんと行う
  • ・上下水道やガスの閉栓をきちんと行う
  • ・漏電火災が起きないように、電気をきちんと止める
  • ・不法侵入されないように戸締まりをきちんとする

といった、「当たり前のこと」を「当たり前に行う」だけで、特定空き家には認定されないということです。

近所の人とのコミュニケーションを欠かさない

実際に特定空き家に認定されるケースの多くは、「空き家の周辺住民からの苦情が自治体によせられたこと」をきっかけとする場合が多いでしょう。

したがって、空き家の周辺に住んでいる人(特に隣地の住民)とのコミュニケーションをきちんととっていれば、特定空き家に認定される可能性も低くなるといえます。

周辺住民に、万が一の場合の連絡先を知らせておくだけでも、特定空き家の認定を回避できる可能性は高くなるでしょう。

空き家管理サービスを利用する

遠方の空き家を持っている場合や、仕事・病気などの事情で、「自分では空き家を管理できない」というときには、「空き家管理サービス」を利用してみるのもひとつの方法です。

空き家管理サービスでは、

  • ・巡回サービス(見回り)
  • ・雨漏り・水漏れの確認
  • ・庭木のチェック

といったことを、依頼することが可能です。

料金は、依頼する業務の内容、頻度に応じて変動するのが一般的です。最も軽いプランでは、月100円といった業者もあるようです。

空き家の解体費用を捻出できない人は補助金を活用できる場合があります

空き家の解体や改修(耐震補強やリフォーム)には、当然費用がかかります。

「解体・改修したくても費用を工面できない」というときには、自治体からの助成を受けられる場合があります。

以下では、補助金・助成金のいくつかについて紹介していきます。

それぞれの地域にも、同種の補助金・助成金があるかもしれませんので、自治体の窓口に問合せしてみてはどうでしょうか。

空き家の解体に対する補助金の例

空き家の解体工事に必要な費用(の一部)として補助金を支給してくれる自治体もあります。

空き家を利用(売却)するために、改修(耐震工事やリフォーム)を行う場合にも補助金の交付を受けられる場合があります。

【埼玉県北本市の補助金の場合】

・補助金の対象となる空き家;市内にある一戸建ての住宅(直近の利用状況が賃貸していたもの、過去にこの補助金を受けているもの、すでに工事に着手しているものは除く)。

・補助金の額:工事に要する費用の1/3(上限20万円)

※ただし、次の条件を満たすときには、補助金が加算されます

①市外からの転入:1人につき5万円(最大4人まで)

②中学生以下の子供 :1人につき2万円(最大4人まで)

③夫婦共に39歳以下 :2万円

・補助金の交付を受けられる人

①補助対象になる空き家に3年以上居住または賃貸することができる人。

②市税等に滞納がない人。

③次のいずれかに該当する人。

ア)補助対象になる空き家の所有者で、第三者に住居として売却しようとする人。

イ)補助対象になる空き家の所有者で、第三者に住居として賃貸しようとする人。

ウ)補助対象になる空き家を購入又は相続で取得し、自分で居住しようとする人

エ)補助対象になる空き家を賃借して自分で住もうとしている人(事前に所有者の同意が必要になります)

・補助金の対象となる改修工事

①市内の施工業者が行う住宅改修工事であること。

②3月末日までに完了報告書を提出できる工事であること。

③建物の内外装等の修繕

④建物の増築・間取りの変更

⑤居室、浴室、玄関、台所、トイレ等の改良など

※家屋、敷地内の残存物の処理費用、門扉、塀等の外構工事、車庫、倉庫等の設置、エアコン等の備品設置工事、シロアリ駆除などは補助金交付の対象外

・参考 空家等改修補助制度(北本市ウェブサイト)

 

【神奈川県厚木市の補助金の場合】

・補助金の対象となる空き家

①1年以上空き家になっている市内の戸建て住宅

②昭和56年5月31日以前に建築された住宅

③床面積が50平方メートル以上のもの

④空き家と敷地の購入費用の合計が500万円以上のもの

⑤個人が取得するもの

・補助金の額:基本額50万円。市外から転入する方は10万円加算、親世帯又は子世帯が同居又は市内に居住する方は10万円加算、40歳未満の方は10万円加算、中学生以下の子がいる方は10万円加算(最大90万円)。

以下の全てを満たす方

・補助金の交付を受けられる人

①空き家を購入し、居住する人

②市税の滞納がない方

③暴力団員等でない方

・補助金の対象となる耐震工事

①空き家の引き渡しから6か月以内に居住

②居住前に耐震改修工事を実施

・参考 要耐震改修空き家取得事業補助金(厚木市ウェブサイト)

 

その他のケースの補助金

空き家の撤去・改修以外のケースでも次のような場合には補助金の交付を受けられる場合があります。

  • ・空き家バンクを通じて契約が成立した場合の修繕費用
  • ・空き家を使って事業を行う際の費用の補助
  • ・空き家に引っ越しするための費用、および仲介手数料等の費用の一部を補助

空き家についての補助金は、自治体によってさまざまですので、まずは相談してみるのが一番よいと思います。

空き家を相続した場合は売却してしまうのも一つの手

「相続した不動産を全く使う予定がない(今後空き家になる)場合」や、すでに「空き家となって利用価値のない(多大なコストをかけないと使えるようにならない)不動産を相続した場合」には、「早期に売却する」ことも有効な対応方法といえます。

買い手がつかない場合は「買取」を利用するのも有効

「市場では買い手が見つからない」という場合でもあきらめる必要はありません。

最近では、不動産の仲介だけでなく、「不動産の買取」に対応してくれる不動産業者や、買取を専門に行っている不動産業者も増えてきているからです。

買取の場合には、市場価格(通常の仲介売買)よりも売却価格は下がってしまいますが、「短期間で確実に売却できる」という点で大きなメリットがあります。

相続した空き家を売却した際に使える3000万円の特別控除

不動産を売却して利益を得た場合には、譲渡所得税が発生します。

しかし、相続から3年以内に、空き家を解体、もしくは耐震工事を施して(耐震基準を満たしている場合は不要)譲渡をした場合には、3,000万円の特別控除を受けることができます。

制度の詳細については、下記の公式の資料も参考にしてください。

空き家の発生を抑制するための特例措置について

空き家を相続放棄した場合はどうなる?

自分では管理することのできない空き家を相続してしまったときには、「相続放棄」することも選択肢のひとつです。

相続放棄をすれば、その相続には一切関わらないことになるため、相続財産を受け継がなくてよくなるからです。

ただし、相続放棄をする際には、次の2点に注意しなければなりません。

  • ・相続放棄は、相続開始から3ヶ月以内に申し立てをしなければならない
  • ・相続放棄をしても「相続財産管理人」を選任しない限り財産の管理義務はなくならない

「放棄すれば終わり」というのは、大きな誤解です。

相続放棄をした場合であっても、その義務を引き受ける「相続財産管理人」が選任されなかった場合には、相続人に義務が残るので、「不要な空き家とは縁を切りたい」というときには、必ず「相続人財産管理人選任の手続き」も申し立てましょう。

まとめ

使う予定のない空き家の管理は、面倒に感じることも多いと思います。

しかし、特定空き家に認定され、市区町村から「勧告」を受ければ、固定資産税の軽減措置もなくなり、行政代執行をうければ、多額の工事費用を請求されて、まさに「負動産」になってしまいかねません。

空き家特措法の施行を受けて、空き家問題に対応するための補助金を支給してくれる自治体だけでなく、空き家問題に取り組む専門家や民間団体も増えています。

空き家の取扱いに困ったときには、これらの窓口に相談してみると良いでしょう。

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